アーティストインタビュー「painter ojifu」 - FROM ARTIST

アーティストインタビュー「painter ojifu」

本日は、主に油絵の具を用いて数々の風景画を生み出されているアーティスト「painter ojifu」さんにお話をお伺いしました。


まず初めに、アーティストになりたいと思ったきっかけは何ですか?

 始まりは30年ほど前の話になります。

突然、妻が「私の顔、描いてよ、描けるでしょ」と私に言いました。

それまでの日常で子供にアニメのキャラクターを描いたり、物作りを器用にこなす事を見てきている妻ですから、顔ぐらい簡単に描けるだろうと思っていたのか、どうかはよく分かりませが、私も描ける自信はありましたので、軽く引き受けました。

その日の夜、妻をモデルにする訳にもいかないので、写真を用意して妻と子供が寝静まった後、描き始めました。

そこには時間も気にせず描く事だけにもくもくと集中している自分がいました。

そして、明け方近くに不思議な現象が起こりました。

突然、背中をドンと押され「描け!」と言われた気がしました。

その時(これだ、自分がやるべきことは)と衝撃を受けた事を覚えています。


私の場合、美容室を経営していましたので、アーティスティックな仕事はしていたのですが、その頃は仕事以外に何かを模索していたように思います。

ですから、自分がすべき事を、見つけた、と言ったほうがふさわしいと思います。


そして、その後、二足のわらじ業がはじまりました。


すごくドラマチックな出会いですね!

ちなみに、これまでで一番印象に残っているアート作品はなんですか?出会った経緯や印象に残っている理由を教えてください。

 エドワードホッパーでしょうか。アメリカで1920年代頃に活躍していた画家で、その時代の街並みやバーなどの情景は単純な塗り方のように見えて実は奥深く、ストレートで余計なものは無く力強い、ホッパーの絵画は見る度にグッときますね。


様々な事象を経て現在の作品の世界観が成り立っていると思うのですが、今の作品のスタイルやそこに行きついた経緯を教えてください。

 冒頭に話した内容の続きのようになりますが、鉛筆から始まり、色鉛筆、パステル、水彩、アクリル、油彩と10年描き続け、その間には地元の方々とカルチャーズクラブを立ち上げ、個展やグループ展、美術展出品、そして、画商も付いてくれるようになっていました。

しかし、その頃、自分の絵画に徐々に悩み始めたのです。

(違う、私が描きたいのは、こんな絵画ではない)

頭の中にはイメージがあるのに、どうしても頭の中のイメージのように表現ができないのです。スキルがイメージに追いつかない、どうすれば良いのだろう、答えは見つかりませんでした。

私は筆を置きました。

そして、その後の15年間筆を持つ事はありませんでした。


13年ほど経ったある日。

私の昔を知る人物から、もう一度描いて貰えないかと誘いを受けたのですが、キッパリ断りました。

私自身、13年も筆を持ってないのです。いまさら昔のように描けるわけがない、描けたとしても感覚を取り戻すのにどれだけの歳月が必要だろうか、とにかく面倒臭い、正直な気持ちだった。

しかし、彼はしつこかった、一年半もの間私を説得し続けたのだ。

その頃には私も根負けして、描く方向へ気持ちは傾いていたのだが、ある日、彼が数本の筆と絵の具を握りしめて我が家にやってきたのだ。

彼のその姿が、もう一度描くことを心に決めた瞬間でした。


やはり感覚を取り戻すには一年ほどかかりましたが、描き進めるうちに筆を置いた時のスランプに気づく事ができました。

人生とは面白いもので、私のような独学者の場合、それに気づくには長いブランクが必要だったのかもしれませんね。


これまで常にアーティスト活動を続けていた、というわけではなかったのですね…!

現在の作品についてお聞きしたいのですが、プロフィールにある「夢と現実の狭間の風景」というモチーフについて、painter ojifu様はどのようなイメージで制作をされていますか?

 筆を置くまで描いていた頃、様々な美術界の方々との交流の中で感じたことは、何故、日本人が描く絵画はどんよりと重たい絵画が多いのだろう、私が描きたいイメージとは違うと日頃から思っていました。しかも、そのような世界の上下関係、システム、しがらみ、忖度、私のように、頭の中のイメージが崩せず、素直でないアウトローな人間には腰が落ち着かない世界でしたね。


その頃から私の中にあるイメージは常にアメリカンポップであり、

風景は見た瞬間に全ての色のイメージは出来ているんですね、後はそのイメージにどれだけ近づけるかが自分との戦いになりますね。

そして、現実にある風景を自分の夢を添えて、もっとステキに、もっと美しく表現する事が私の絵画のモットーであり目標でもあるのです。


現在に至るまでたくさんの作品を制作してきたかと思いますが、

painter ojifu様にとって風景画とは​どんな存在ですか?

 描きたい風景に出会った時、うわぁーと心が踊るんですね、そのあと早く描きたくてしょうがなくなる。

その感動を味わいたくてまた捜し求める。

かっこよく言えばそうなるのですが、正直に言えば描いていて一番楽なんです 笑

再び描き始めて気づいたのですが、その時は既に60歳になっていて、びっくりしました 笑

以前は人物でも静物でもなんでも描いていたのです、特に細かい建造物群などを描くのを得意としていた頃もありましたが、現在は人物を描くとその中に入り込みすぎて疲れるし、水彩は水の処理が面倒臭いし、描いていて手ごたえが無いし、

そんな訳で、私には精神衛生上一番よい風景画を描いているのかもしれません。


​​​painter ojifu様の視点から、昨今の作家活動の場やライフスタイルはどんな風に感じられますか?

現在はSNSなどの普及で発表の場が多く、幸せですね。以前描いていた頃は、自分の絵画を見てもらう為に個展やグループ展を開き、画商の誘いを待つしかありませんでした。

ですから、一人で黙々と描くしかありませんでした。

確かに絵が売れる売れないは昔も今も変わらないように思いますが、現在は考えや行動次第でチャンスが掴める場が多い気がしますね。


普段の制作におけるインスピレーションはどのような所から受けますか?

絵画制作においてインスピレーションとイマジネーションは不可欠ですし、生まれ持ったものも重要ですね。

特にクリエイティブな世界においては、この二つの強弱で作品に差はでますね。

以前描いていた頃は、美術界の方々や美術の先生方と話す機会が多かったのですが、よく言われたのは、あなたは、色彩感覚や遠近法を生まれ持ってる方だ、だから人様から習えないし、習わないほうがいい、このまま描き続けた方が良いと、当時は分かったような、分からないような、今思えば性格まで見抜かれていたようですね。

話がちょっとそれましたが、私の場合、絵画をスタートする時には、既に頭の中では色も形も全体像が出来上がっているので、そのイメージにスキルがついていけるか、ただそれだけの事ですね。


様々な技法や媒体の中で、作品制作において得意なものがあれば教えてください。

はっきり言ってありません。制作においてすごい技法を用いて行なわれているのか、どうかはよく分かりませんが、アクリル絵の具で制作過程の半分まで塗ったあとその上から油絵の具で仕上げることはありますね。

それと、アクリル絵の具を使用する時、白の代わりに、地塗り材のジェッソホワイトを使用したり、空や雲に色を乗せた後にジェッソのホワイトを上から塗り、薄く浮き出てきた色を利用して、さらに色を乗せると面白い雰囲気になりますね。


アート以外に興味がある事、趣味などはありますか?

絵を再開する以前にロードバイクと小説を執筆していたことがありました。

ロードバイクは5年間乗っていたのですが、息子が乗りたいと言い、ヘルメットからユニホームまで全部取られてしまいました。

小説は私の少年時代(私は横浜中華街の市場通りで生まれ育ちました)

横浜中華街を舞台にした、様々な人種の少年たちとのバトルものを面白おかしく書いたところ、大手出版2社から話がきたのですが、2社とも共同出版どまりでした。

出版には、企画出版、共同出版、自費出版が

あり、企画出版であれば全額出版社持ちですが共同出版の場合、面白いが売れ行きが見えない、爆発するかもしれないし、売れないかもしれないと出版社が判断した作品は、本の最所の印刷代や諸々をこちらが負担しなければならない、首を縦にふれば全国デビューできるが、予想として300万はかかる、妻は言う、金額は用意できるし、デビューもさせてあげたいけど、これって賭けだよねぇ。

その通りである、そして、今回はあきらめることにした。


もし、絵を描いてなければ上記の2つは続いていたでしょうが、現在は絵だけでいっぱい、

しかも、実は私の次男坊がハルレザーと言う名称でレザークラフト作家をしていまして、YouTubeや各種SNSで活動中です。私もその工房をアトリエとして一緒にやっておりますので、自宅は油彩中心、アトリエは持ち運びできるアクリル画中心で5枚程は同時進行している有様なので、今は他のことができないのが悩みですね。


たくさんお話を聞かせていただき、ありがとうございました!現在の活動に至るまで、様々な困難や出会いがあったんですね…。

それでは最後に、FROM ARTISTをご覧の皆様に一言お願いいたします。

絵画を一枚の写真だけで判断する事は大変難しいことだと思います。それは描き手側にも同様な思いがあるはずです。

しかし、原版を手にした時、人知れぬ感動があなたを包み込むはずです。

そして、顔を近づけて覗き込めば、コピーされた小さな写真では見る事ができない、筆の擦れや絵の具のおうとつを目にした時、作家の思いまで感じるはずです。

それが世界に一枚しかない原版の醍醐味でもあるのです。

ですから、写真だけに惑わずじっくり判断して下さい。


Instagram、Twitter、BASEなどで他の絵画を多数upしておりますので、ご覧頂けたら幸いです。

 

FROMARTIST掲載中の作品をご紹介

 

 

作品名白川郷 back garden

 

詳細ページURL:https://from-artist.com/products/sirakawagou-back-garden

 

作品一覧:https://from-artist.com/collections/painter-ojifu

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