アーティストインタビュー【Sizzle】 - FROM ARTIST

アーティストインタビュー【Sizzle】

本日は、現在FROM ARTISTで大活躍中のアーティスト「Sizzle」さんにお話をお伺いしました。


本日はお忙しい中インタビューにご協力いただきありがとうございます!

Sizzleさんは幼少期よりシュルレアリスムやキュビズムの影響を受けとありますが、アートが身近にある生活環境で育たれたのですか?


幼少期は特にアートが身近にある生活環境ではなかったのですが、学校の美術の教科書に載っている小さな図解や街中で見かけるちょっとしたアート作品など、まわりの同級生や大人たちがスルーしているような美術系のものごとに、強く心を惹かれていました。

当時から周囲と比較してすごく感受性が豊かな自覚があり、色や形、音、香りなど、五感を揺さぶるあらゆるものに感化されて少し生きづらかったのを覚えています。


音楽、文学、美術、いろいろと好きなものはありましたが、とくに絵を描くのが元々上手だったので、自然と美術系の分野に傾倒していきました。


その中で一番印象に残っているアート作品はなんですか、その理由を教えてください。


今とはずいぶん感じ方が違いますが、美術の教科書で見たピカソの「ゲルニカ」と「泣く女」が強く印象に残っています。

当時は何が描かれているのか、なぜ惹かれるのかなど、何もわからずただただ気になっていただけでしたが、大人になってからシュルレアリスムやキュビズムの存在を知り、その思想や表現方法が自分の好みなのだと理解しました。


ピカソのゲルニカと泣く女、確かに奥深く、美しく、力強い作品ですよね。Sizzleさんの心を奪ってしまう理由が分かります。

シュルレアリスムやキュビズムで特に影響を受けたアーティストはいますか?どんな部分に影響を受けましたか?


シュルレアリスムやキュビズムは作品として好きですが、自分が影響を受けたアーティストで言うとその周辺の時代の表現主義や象徴主義の画家になると思います。


特に、20歳頃にフランシス・ベーコンの作品みたときは、20年間で一番の衝撃を受けました。「こんなに意味のわからない絵なのに、なぜか美しくて、恐ろしくて、一体この絵の正体はなんなんだろう。何が描かれているのだろう」と感じたことのない不思議な感覚になったのを覚えています。

当時はその衝撃が自分に与えた影響をうまく言語化できなかったのですが、今はもう少し理解が深まり、そのときに感じたような複雑な感情を自分の作品でも表現したいなと思うようになりました。


今の自分の画風だと、たまにカンディンスキーやクレーのようだねと言われることがありますが、表現主義の思想をまとっているだけで画風そのものに影響を受けているわけではないかなと思っています。



今の作品のスタイルと、そこに行きついた経緯を教えてください。ライブペイントもされていますが、始めたきっかけを教えてください。


今はアクリル絵の具とペインティングナイフを使って、コンポジション(画面構成)を試みる作品を描いています。線と面をひたすら重ねていき、秩序の構築と瓦解を繰り返していきます。

自分の場合はそこに行き着くまでにたくさん絵を描いてきたわけではなくて、ただただ好きな色や形、構図、温度、印象などについて「なぜ好きなのか?」「どう好きなのか?」を何年も考え続けてきただけのような気がします。好きなものに対する感覚の精度を上げていく中で、あるとき自然と今のスタイルが出来上がりました。

これからはたくさん描く段階に入っていきたいと思っています。


ライブペイントを始めたきっかけは、実は絵はあまり関係なくて...人生でなにか大失敗をしてみたくて、その手段として絵を利用しました。今思うと、これも新たな感覚を体験するための実験だったのかなと思います。

それまでは趣味でデッサンをする程度で特に絵の活動はしておらず、また極度のあがり症で人前に立つことも難しかったので、不特定多数の人間に注目される環境下で絵を描くなんて自分には到底考えられないことだったのですが、思い立って2020年のデザインフェスタで横幅8mもの巨大壁画に挑戦することにしました。

結果、たくさんの人が足を止めて見てくださる中で思いのほかパフォーマンスを発揮できたので、どちらかというと成功体験に繋がったのですが、いずれにしてもやって良かったなと思います。知らない環境にも臆せず飛び込む度胸がつきましたし、本格的に絵の活動を始めるきっかけにもなりました。



なんて素敵な体験なんでしょうか。そこに辿り着くまでに様々な葛藤があったと思いますが、Sizzleさんのこの体験は、この記事を読む人に挑戦する勇気を与えてくれると思います。

Sizzleさんは「未完の完成」を目指して制作をされているそうですが、そこにある想いや特別に意識している事などありましたら教えてください。


完成しきっていないものの中に「完成」を見出すことに興味があります。

たとえば、花開く前のつぼみの可憐さとか、建設中のビルの剥き出しになった鉄筋の美しさとか。本来の目的はその後にあるわけですが、鑑賞者の視点次第では過程にも価値を見出せる場合があると考えています。

絵の制作でも、つい上手に・正しく描いて完成させることを目的にしてしまいがちなのですが、自分の場合はそうなると面白みのない絵になってしまうので、表現したいことの本質を忘れないよう注意しています。


ただ、作品としてまとまっていないと単純に「未成熟なもの」「つくりかけのもの」と見做されてしまうのが「未完の完成」の難しさだなと思っています。今もなお模索中です。


Sizzleさんの得意な技法などあれば教えてください。


ペインティングナイフで描くアクリル絵画か、木炭ドローイングが得意です。ある程度は自分で制御できるけれど、たまに予期しない要素がちょっとだけ入るのが心地よいです。


フルイドアートやドリッピングアートのような偶発性の高いものは自分でやる面白みがあまり感じられず、逆に高いコントローラビリティが必要なものは技術的に足りていないので、その中間で最も自分に扱いやすい表現方法を探っているところです。



制作におけるインスピレーションはどのような所から受けますか?特にライブペイントはどんな事に影響を受けますか?


日頃から自分が心惹かれるもの・気になるものをコレクションしたり研究したりすることがインスピレーションに繋がっていると思います。

たとえば私は階段や鉄筋が好きなのですが、それらの共通点を挙げてみると「冷たさ」「硬さ」「直線美」「規則性」などのように、自分の"好き"をいくつかの要素に分解することができると思います。それらの要素に対して、「あたたかさ」ではダメなのか?それはなぜか?規則性とはどの程度か?無秩序な規則でもよいのか?許容範囲はどの程度?...などと延々と考えていると、あるとき急にひらめくことがあり、その勢いで制作することが多いです。

階段や鉄筋そのものを見たまま描くのでは、私が感じている感覚を他者に伝えることは難しいと思っているので、こうした"好き"の分解作業が必要になります。


ライブペイントでは周囲の環境に強く影響を受けていると思います。

照明が暗いな と思ったら明度の高い絵の具を多用してみたり、賑やかな場所であれば賑やかな画面構成にしたり、あるいは逆に静けさを感じる画面構成にすることで目立たせてみたり。

絵単体ではなく、空間や作家も含めてひとつの作品として見られるのはライブペイントの特性のひとつだと思うので、周囲の環境はよく観察しています。



今後挑戦してみたいと思っている表現やテーマはありますか?ライブペイントしてみたい場所や環境などもありましたら教えてください。


少しずつ絵の領域からはみ出した制作もしてみたいなと思っています。キャンバスだけでなく物に描いてみたり、立体作品をつくってみたり。いろいろなアプローチを試してみたいです。


ライブペイントは、機会があれば公共空間でのパブリックアートに挑戦してみたいです。パブリックアートはあまり自分の理解が及ばない領域なので、実際にやってみたら何かあらたな発見があるのかな?と興味があります。



アート以外に興味がある事、趣味などはありますか?


言語化しがたい複雑な感情を味わうことが好きなので、よく変な実験をしています。

最近は、お花を食べたり、ケーキを踏んだりしてみたいな...と思っていますが、倫理的に憚られるのでどうしようかなと考え中です。嫌いなことや無関心なことをあえて体験してみるのも好きです。


哲学、心理学、精神分析も好きでよく勉強しています。



それでは最後に座右の銘を教えてください。


温故知新

守破離


基礎を大切にしつつ、いつも未知のことに挑戦していたいので。


インタビューにお答えいただきありがとうございました。

今後もFROM ARTISTはSizzleさんの作品を楽しみにしております。

 

作品名:鏡像

詳細ページURL:https://from-artist.com/products/kyouzou

作品一覧:https://from-artist.com/collections/Sizzle



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