時空を超えた物語をキャンバスに。カザフスタン出身の画家が写実と抽象で描く、心に寄り添う「静かな美しさ」【キャリ・ガッシュインタビュー】

時空を超えた物語をキャンバスに。カザフスタン出身の画家が写実と抽象で描く、心に寄り添う「静かな美しさ」【キャリ・ガッシュインタビュー】

カザフスタンから所沢へ。15年の歩みと幻想的な世界観

今回は写実的な表現と抽象的な表現双方で活動されている「キャリ・ガッシュ」さんにお話しを伺いました。

  「北野の朝 」、油彩、キャンバス、2017年

 

インタビュアー:本日はよろしくお願いいたします!自己紹介と、現在どのような作品(活動)を中心に制作されているか教えてください。

キャリ・ガッシュ:私は1972年、カザフスタン共和国のアルマトィ市に生まれました。子どもの頃から絵を描くことが大好きでしたが、学生時代は芸術とは別の道を歩んでいました。

現在は家族と埼玉県所沢市に暮らしています。当地で小さな絵画サークルに入ったことをきっかけに、幼い頃の創作意欲が再燃し、それから15年以上作品を創り続けています。当初は自分自身や身近な人のために描いていましたが、徐々に京都、大阪、東京で開催される公募展や、美術団体、ギャラリーの企画展にも参加するようになりました。

私の作品は、古典絵画の技法を基盤としつつ、身近な風景や動物などを題材に、どこか懐かしさを感じていただけるような世界を描いています。

また近年は、日本やヨーロッパの神話、伝説、童話から着想を得て、幻想的な世界を表現しています。物語に登場する象徴的な存在を通して、現代を生きる私たちの葛藤、孤独、希望、ひいては時代や国境を超えた普遍的な人間心理を、絵の中に映し出したいと思っています。

「月夜の宴会」、油彩、キャンバス、F15、2021年

 

想像の海を広げた読書と、心を揺さぶった2つの名画

インタビュアー:とても幅広く活動されていますね!では、アート・ものづくりの道を志した「原点」や、現在の活動を始めた「きっかけ」は何ですか? 

キャリ・ガッシュ:一人っ子だった私は、一人で過ごす時間が多く、その時間を読書や絵を描くことに費やしていました。この二つを通じて私の想像と感性の世界は無限に広がっていき、それが間違いなく今の創作の原点になっています。

また、子どもの頃に出会った絵画も心に深く刻まれています。特に強い影響を受けたのは、ロシアの画家イワン・シーシキンの《松林の朝》と、イタリア・ルネサンスの画家ジョルジョーネの《ユディト》です。とりわけ《ユディト》には強く惹かれ、10代の頃にはその複製画をベッド脇の壁に飾っていたほどです。

時代も画風もまったく異なる二つの作品ですが、それぞれが当時の私の心を大きく揺さぶりました。美しさや人間の内面を探求し続ける現在の表現活動も、この2つの作品に繋がっていると感じています。

「早春を耕す」、油彩、キャンバス、F10、2024年

 

過去の普遍的な精神性と、現代を生きる人間の心を結ぶ

インタビュアー:拝見しましたが、どちらも素晴らしい作品ですね!次に、作品を制作する上で、最も大切にしている「こだわり」や「コンセプト」を教えてください。

 キャリ・ガッシュ:私が作品を通して表現したいのは、「私心のない静かな美しさ」です。 それは、何気ない風景や身近なものの中にひっそりと息づく美しさであり、自然のままに生きる動物たちの姿、そして人間の内面にある感情が映し出す美しさでもあります。

同時に、古来より人々が持ち続けてきた自然への畏敬や世界とのつながり、文化や精神的遺産に息づく知恵や感性を、現代的な解釈を交えながら表現したいと考えています。

過去から受け継がれてきた普遍的な精神性と、現代を生きる人間の心を結びつけること。それが私の作品のコンセプトであり、制作において最も大切にしている課題です。

「グリーンドアの猫」、油彩、キャンバス、F3、2025年

 

神話から浮世絵まで。巨匠や仲間から受け取る無限のインスピレーション

インタビュアー:明確なコンセプトに基づいて活動されているのですね!では、日々の制作のアイデアやインスピレーションは、どのようなところから湧いてきますか? 

キャリ・ガッシュ:私の創作の出発点となるのは、これまでに出会ってきた物語です。特に神話や伝説、童話、そして人々の暮らしの中で受け継がれてきた伝承から多くの着想を得ています。

そうした物語をそのまま描くのではなく、現代を生きる私たちの視点から新たな解釈を加えたいと考えています。現代人はますます複雑で理解し難いものになっているように思えますが、物語は人間の内面世界を見つめ直すための大切な手がかりになります。

もう一つのインスピレーションの源泉は、美術作品の鑑賞です。過去の巨匠たちはもちろん、今、そしてこれから活躍する画家たちの作品からも多くの刺激をいただいています。特にアンリ・マティス、クロード・モネ、ギュスターヴ・モローの作品には深い影響を受けました。一方で、所沢や東京の展覧会で出会う作家仲間の作品からも、新しい発見や創作意欲をもらっています。

また、私が心から魅了されているのが「浮世絵」です。大胆な構図や色彩、そして簡潔な表現の中に宿る豊かな美しさには、尽きることのない学びがあります。これからも浮世絵に着想を得た作品を数多く描いていきたいですね。

「浮世猫鮭捕り」、油彩、キャンバス、F8、2025年

 

「自己満足」から「対話」へ。創作姿勢を変えた初めてのグループ展

インタビュアー:浮世絵とは意外でした!続いて、これまでの活動の中で、特に印象に残っている出来事や、ご自身にとって「ターニングポイント」となった作品(または出来事)はありますか? 

キャリ・ガッシュ:私にとって大きな転機となったのは、絵画サークルの仲間たちと初めて開催したグループ展でした。

それまでは、自己表現や個人的な楽しみのために絵を描いていましたが、その展覧会で私の絵をご覧になった方々から直接お話を伺ったことで、創作に対する姿勢がガラリと変わったのです。

自分の作品が人の心に様々な感情やインスピレーションを生み出すこと、そして私自身もご覧になった方々から新しい視点や学びをいただけることを知りました。それ以来、絵を通して出会う方々との対話をとても大切にしています。それは、次の創作へ向かうための大きな原動力になっています。

「白雪姫」、油彩、キャンバス、M30、2026年


写実と抽象の融合。国境を越えて人の心に響く作品を目指して

インタビュアー:とても素敵な経験をされていますね!続いて、作家として、今後挑戦してみたいことや、これからの展望(夢)を教えてください。 

キャリ・ガッシュ:私は常に前へ進み続けたいと思っています。そのために、新しい表現方法を探り、新たな技法を学びながら、さまざまな可能性に挑戦しています。

現在は、「写実的な表現」と「抽象的な要素」の融合を試みています。たとえば、背景を抽象的に描きつつ、一部分を具象的に表現するといった方法です。写実と抽象は相反するものではなく、むしろ互いの魅力を引き立て合い、人間の感情や内面をより豊かに表現できるのではないかと感じています。まだ試行錯誤の段階ですが、この可能性をこれからも大切に育てていきたいです。

将来は、文化や言語の壁を超えて多くの方々の心に響く作品を描き続けたいと願っています。日本国内だけでなく海外でも作品を発表し、そこでの出会いや対話を通して、作家としてさらに成長していきたいです。

一枚の絵が、誰かの心にささやかな感動と安らぎを届けられたら

インタビュアー:これからが楽しみですね!最後に、この記事を読んでいるファンの方や、これからキャリ・ガッシュさんの作品に出会う方へメッセージをお願いします。 

キャリ・ガッシュ:これまで私の作品をご覧くださった方々に、心より感謝申し上げます。そしてこれからも、絵を通して新しい出会いがあることを願っています。

私が描いた一枚の絵が、誰かの心にささやかな感動や安らぎ、新しい何かを生み出すことができたら、これほど嬉しいことはありません。これからも、一つひとつの作品に心を込めながら、皆様の心に静かに寄り添えるような作品を描き続けたいと思っています。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

【お名前(活動名)】
キャリ・ガッシュ

【肩書き・ジャンル】
画家(シンボリック・リアリズム)

【SNS・WEBサイトのURL】
https://www.instagram.com/kary_guash/

【FROM ARTISTアーティストページ】

https://app.from-artist.com/artist/0cee568c-455c-48f0-a7c1-aa168a9d8f53

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