抽象画の楽しみ方完全ガイド|初心者でもわかる鑑賞のコツと魅力 - FROM ARTIST

名作とエピソードで学ぶ抽象画の楽しみ方・見方入門

この記事の結論

  • 抽象画は色や形そのものを主役にした芸術で、カンディンスキーやモンドリアンが20世紀初頭に確立しました
  • ポロックの身体性、ロスコの色彩表現、日本の具体美術など、作家のエピソードを知ると作品理解が深まります
  • 「何が描かれているか」ではなく、色や形が自分の中に引き起こす感覚に注目することが鑑賞のコツです

抽象画は、色や形そのものが放つ力を感じ取る芸術です。作家の制作背景や逸話を知ることで、一見難解に見える作品が驚くほど身近になります。

抽象画とは何を描いた絵なのでしょうか?

抽象画は、自然や物体を写実的に描くのではなく、色や形、線といった絵画の要素そのものを主役にした作品です。

20世紀初頭、ワシリー・カンディンスキーが「内的必然性」という概念を提唱し、音楽のように対象を描かずとも感情や精神を表現できることを示しました。彼は1910年頃に制作した水彩画で、具体的なモチーフを完全に排除した最初期の抽象画を生み出したとされています。カンディンスキーは音楽家でもあり、色彩を音符のように扱い、画面を楽譜のように構成しました。

一方、ピエト・モンドリアンは樹木の連作を通じて徐々に形を単純化し、最終的には垂直線と水平線、三原色のみで構成される「コンポジション」シリーズへと到達しました。彼の作品は自然の本質を幾何学的な秩序として抽出したものです。

抽象画にはどんな種類がありますか?

抽象画は大きく分けて、幾何学的抽象と叙情的抽象の二つの流れがあります。

幾何学的抽象は、モンドリアンやカジミール・マレーヴィチのように、直線や円、四角形などの幾何学形態を用いた作品です。マレーヴィチの「黒の正方形」(1915年)は、白い画面に黒い正方形だけを描いた極限まで削ぎ落とされた作品で、彼が提唱した「シュプレマティスム(至上主義)」の代表作となりました。この作品について彼は「対象のない感覚の至上性」を表現したと語っています。

一方、叙情的抽象は、ジョアン・ミロやワシリー・カンディンスキーのように、自由な形態と色彩で感情や夢、無意識を表現します。ミロは「絵画の暗殺」と題した連作で、伝統的な絵画の約束事を破壊し、子どものような自由な線と形で詩的な世界を創造しました。

種類 特徴 代表的作家
幾何学的抽象 直線、円、四角形などの規則的な形態を使用 モンドリアン、マレーヴィチ
叙情的抽象 自由な形と色で感情や無意識を表現 カンディンスキー、ミロ
抽象表現主義 身体的な動きと即興性を重視 ポロック、ロスコ

ジャクソン・ポロックの「ドリッピング」は何が革新的だったのでしょうか?

ポロックの技法は、絵筆を使わずに絵具を滴らせ飛び散らせることで、偶然性と身体性を作品に取り込んだ点が革新的でした。

彼は床に置いたキャンバスの周りを歩き回りながら、棒や筆から絵具を垂らして制作する「アクション・ペインティング」を確立しました。この方法により、作家の身体の動きそのものが画面に記録されます。1950年に撮影された制作風景の写真は、まるで舞踏のように激しく動きながら制作するポロックの姿を捉えており、絵画制作が静的な行為ではなく動的なパフォーマンスであることを示しました。

ポロックは「私が絵の中にいるとき、自分が何をしているか意識していない」と語り、無意識の領域から湧き上がるエネルギーを画面に定着させようとしました。

マーク・ロスコの色面絵画はどう見ればよいのでしょうか?

ロスコの作品は、大きな色の面がゆっくりと呼吸するように見えるため、作品の前で時間をかけて色彩の微妙な変化を感じ取ることが大切です。

彼の代表作は、画面を水平に分割した矩形の色面で構成されています。境界線はぼやけており、色と色が溶け合うように配置されています。ロスコ自身は「私は色彩関係に興味があるのではない。人間の基本的な感情を表現したいのだ」と述べ、悲劇、恍惚、運命といった普遍的な感情を色彩を通じて伝えようとしました。

晩年にロスコが手がけた「ロスコ・チャペル」(ヒューストン)では、ほぼ黒に近い暗色の大画面が瞑想空間を作り出しています。彼は鑑賞者が作品に近づき、色彩に包まれる体験を重視し、「私の絵は親密で人間的なものだ。大勢の人に見られるためのものではない」とも語っています。

日本の抽象画にはどんな特徴がありますか?

日本の抽象画は、西洋の影響を受けながらも、書や禅の精神性、余白の美学といった伝統的な美意識を取り込んだ独自の展開を見せています。

「具体美術協会」(1954-1972年)は、吉原治良を中心に関西で結成された前衛美術グループで、身体性と物質性を重視した作品を制作しました。白髪一雄は床に広げたキャンバスの上で絵具を足で塗りたくる「フット・ペインティング」を実践し、肉体と絵具の直接的な格闘を作品化しました。また、村上三郎は紙を張った枠を勢いよく突き破るパフォーマンスを行い、一瞬の行為が作品となる概念を示しました。

一方、斎藤義重や菅井汲は、幾何学的な形態の中に日本的な間や緊張感を取り入れた抽象作品を制作しました。特に斎藤義重の木を使った浮彫作品は、禅庭園の石組みのような静謐な構成が特徴的です。

抽象画を見るときのコツはありますか?

抽象画を見るときは、「何が描かれているか」を探すのではなく、色や形、質感が自分の中に引き起こす感覚に注目することが大切です。

まず、作品の前で少し距離を取り、全体の印象を受け取ります。明るく感じるか、重く感じるか、動きがあるか静的か、といった第一印象を大切にしましょう。次に近づいて、絵具の厚みや筆の跡、色の重なりなど、作家の手の痕跡を観察します。油彩作品であれば、絵具が盛り上がった部分や削られた部分から、制作の時間の流れが見えてきます。

カンディンスキーは「色彩は鍵盤であり、目は槌、魂は多くの弦を持つピアノである」と表現しました。音楽を聴くように、理屈抜きに色や形が奏でる「視覚的な音楽」を楽しむことが、抽象画鑑賞の本質と言えるでしょう。

まとめ

  • 抽象画は色や形そのものを主役にした芸術で、カンディンスキーやモンドリアンが20世紀初頭に確立しました
  • 幾何学的抽象と叙情的抽象という二つの大きな流れがあり、それぞれ異なる美意識を表現しています
  • ポロックの身体性、ロスコの色彩による感情表現、日本の具体美術の物質性など、作家の制作背景を知ることで作品の見方が深まります
  • 「何が描かれているか」ではなく、色や形が引き起こす感覚に注目することが抽象画を楽しむコツです

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よくある質問

Q.抽象画とは何ですか?
A.自然や物体を写実的に描くのではなく、色や形、線といった絵画の要素そのものを主役にした作品です。カンディンスキーが20世紀初頭に、音楽のように対象を描かずとも感情を表現できることを示しました。
Q.抽象画の種類にはどんなものがありますか?
A.大きく分けて幾何学的抽象と叙情的抽象があります。前者はモンドリアンのような規則的な形態、後者はカンディンスキーのような自由な形と色で感情を表現する作品です。
Q.抽象画はどう見ればよいですか?
A.「何が描かれているか」を探すのではなく、色や形、質感が自分の中に引き起こす感覚に注目することが大切です。音楽を聴くように、理屈抜きに視覚的な体験を楽しみましょう。

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