波は、いつも同じ音を立てているようで、同じ瞬間は二度とない。risa takedaの作品に向き合うとき、そのことを思い出す。彼女の描く海は、写実的な風景ではなく、記憶のなかで揺れ動く感情そのものだ。流れる筆跡と砂の質感が織りなす画面には、陸に立つ私たちの視点と、深く沈んでゆくまなざしが同居している。静けさと勢い、明るさと翳り。そのあわいにある風景を、色彩の重なりが静かに語りかけてくる。
作品紹介
海は贈り物を運んでくる。貝殻や流木、光の粒、ときには名前のつかない感情さえも。今回ご紹介する2つの作品は、そうした海の記憶を異なる角度から捉えている。ひとつは波打ち際で拾い集める喜び、もうひとつは明日という時間へ向かう静かな決意。どちらにも共通するのは、色彩が重なり合うことで生まれる、言葉にならない余韻だ。
では、拾い上げた記憶を胸に、時間の流れへと視線を移すとどうなるか。
拾い上げること、待ち続けること。海が教えてくれるのは、そのどちらも同じくらい尊いということかもしれない。
2つの作品が映し出すのは、海という存在の多面性だけでなく、それを受け取る私たち自身の内側でもある。波打ち際に立つたび、私たちは何かを拾い、何かを手放す。risa takedaの作品は、その繰り返しのなかにある静かな希望を、色彩と質感で手渡してくれる。あなたの空間に迎え入れたとき、どんな海が立ち上がるだろうか。