鉛筆だけで描かれた世界は、時に写真よりも雄弁だ。お心餅が紡ぐ線と影は、目に見える現実をなぞるのではなく、心の内側にある風景を静かに掬い上げる。「ノンリアリズム」と自ら名乗るその筆致は、リアルでもなく、完全な空想でもない。YouTubeでタロット占いと鉛筆画を組み合わせた動画を配信し、レトロで落ち着いた雰囲気のなかに天然な自由さをにじませる彼女の表現世界を、一点の作品を通して覗いてみたい。
作品紹介
タイトルに込められた「空想リアル」という言葉が、そのまま作品の性質を物語っている。現実にあるはずのないものが、確かな質量を持って画面に定着する。あるいは、実在するはずのものが夢のように曖昧に溶けていく。鉛筆の濃淡だけで構成される世界には、どこか懐かしさと、見知らぬ場所への憧憬が同時に宿る。
モノクロームの静けさのなかに、確かな体温が感じられる。空想とリアルは対立するのではなく、重なり合いながら新しい景色を生んでいく。
鉛筆の芯が紙に触れる瞬間、そこには作家の呼吸が刻まれる。お心餅の作品は、派手な色彩も大胆な構図もないけれど、だからこそ静かに心に沁みてくる。空想とリアルの間で揺れるモノクロームの世界は、見る者それぞれの記憶や感情と呼応しながら、新しい表情を見せてくれるだろう。