絵筆が捉えるものは、いつも目に見えるものだけとは限らない。syuichi yamaokaの作品群を前にすると、その事実が静かに立ち上がってくる。舞妓や芸妓、花や松といった日本の伝統的なモチーフ。その傍らに置かれた、言葉から生まれた抽象の画面。アクセサリー製作を出発点に、2003年より自社ブランドxilentthinkerを軸に絵画を手がけてきた彼の表現は、具象と思想というふたつの極を行き来する。ここには、目に見える美と、言葉でしか掴めない概念とが、同じ筆致で描かれている。
日本の形象――人と自然
白い肌、紅い唇、黒髪に挿された簪。日本の伝統美を象徴する舞妓や芸妓の姿は、いつの時代も絵画の題材として選ばれてきた。それは単なる風俗の記録ではなく、ある種の理想化された美の結晶として。花々や松もまた同様に、季節や生命の移ろいを映す自然のモチーフとして、日本文化の中で繰り返し描かれてきた。syuichi yamaokaが手がけるこれらの作品には、そうした伝統への敬意と、現代の筆致が静かに溶け合っている。
では、舞妓から芸妓へ。少女から女性へと成熟していくその境界線は、どのように描き分けられるのだろうか。
人の姿から、今度は自然へと視線を移してみる。花という、儚さと華やかさを同時に宿すモチーフ。
同じ花でも、構図や色彩が変われば印象は大きく変わる。
花のやわらかさとは対照的に、松は力強さと長寿の象徴として立ち上がる。
人の姿も、自然の形も、すべては時間の中で移ろう。それでもなお、描かれたモチーフは画面の中で静止し、ある種の永遠を宿す。
初めて絵を買う方へ
絵選びで大切なのは、サイズと空間の関係を考えることです。小さな作品から始めるなら、3万円前後の価格帯が目安。壁の余白を活かすことで、どんなインテリアにも馴染みやすくなります。まずは自分が惹かれた作品を見つけることが、長く付き合える1枚との出会いになるでしょう。
言葉が生む抽象――平死和
「平和の中には死がある。そして、生きる。」修行時代に生まれたというこの言葉は、ひとつの思想であり、哲学的な問いでもある。それを視覚化するとはどういうことか。syuichi yamaokaは「平死和」という造語を生み出し、具象ではなく抽象という手法でその概念に形を与えた。アクセサリー製作から生まれた抽象表現の系譜が、ここでは言葉と結びつき、ひとつの思想的作品として結実している。
見えないものを描くこと。それは、鑑賞者それぞれの内側に、異なる問いを投げかける行為なのかもしれない。
具象であれ抽象であれ、syuichi yamaokaの作品に通底するのは、日本という風土に根ざした美意識と、そこに生きる者の思索だろう。伝統的なモチーフも、哲学的な言葉も、彼の手にかかればひとつの絵画として静かに呼吸を始める。壁に掛けたとき、その作品が部屋にもたらすのは装飾以上のもの――問いかけであり、余韻であり、対話の始まりかもしれない。